待ちに待ったパリオリンピックと、パラリンピックがついに幕を閉じました。
テレビ観戦、テレビ局からのネット観戦、チケットでの現地観戦、パブリックビューイングでの観戦、マラソンやセーヌ川での水泳の無料観戦などを体験することが出来ました。
そして、テレビだけでは伝わらない現場の雰囲気、特に勝者だけでなく、セーヌ川で泳ぐ遅れた選手にも送られる暖かい声援は、心温まるものでした。勝ち負けを超え、つらい瞬間にも国境を越えた応援が続く光景は、現地でしか味わえない素晴らしい体験となりました。
今回は、パリオリンピックの開会式前のQRコードを利用した新しいセキュリティの試みと、その影響について詳しく振り返ります。
QRコードとは?
QRコード:Quick Response Codeの略です。
高速で読み取りが可能な二次元コードで、カメラ付きのデバイスで読み取ることができ、警備員の持っている機器でこのQRコードを当てると一瞬で照合されます。
QRコードを使う為には、事前に氏名や住所など、各事項の登録を済ませる必要があります。
大規模イベントで、多くの出入りを迅速に照合するには不可欠なセキュリティシステムです。
このQRコードを使うと、パリの一部地域に住む住民が移動制限区域の中に容易に出入りすることが出来るようになりました。
QRコードのお知らせ
QRコードのセキュリティシステムの告知はある日、突然でした。
2024年5月13日の夜20時14分。
私のスマートフォンから聞いたことの無い異常音が鳴りました。
スマートフォンの画面に突然『緊急アラート』という警告が表示され、私は一瞬、国内外で何か大きな事件が発生したのではないかと心配しました。
パリの一部地域の住人のスマートフォンに対して送られた緊急アラートです。
内容は、2024年7月18日から26日までのセキュリティ境界に関する通知で、オリンピック期間中の安全を確保するための新しいセキュリティ対策の導入についてのお知らせでした。
この突然の告知は、国内の主要テレビ局や地元紙を含むメディアで広く取り上げられ、専門家たちによるスマートフォンのデータプライバシー問題や、緊急伝達手段の是非についての議論が激しく交わされました。これにより、さまざまな意見が飛び交い、市民の間でも大きな話題となりました。
2024年7月:困難な移動
2024年パリオリンピックの開催に伴い、大規模な交通機関の運行スケジュール変更が行われました。
具体的にはトロカデロ広場のメディアブースの建設、エッフェル塔周辺のイエナ橋への立ち入り規制などが当てはまります。
会場周辺の工事の影響で、多くのバス路線が運休または迂回を余儀なくされ、会場周辺で交通が大きく分断されたことで、大きな距離の移動が出来なくなりました。
特に、イエナ橋(Pont d’Iéna, 75116 Paris)周辺では、大会終了後も歩行者天国が継続されています。これに伴い、30番バスと82番バスの運行ルートが変更され、イエナ橋の上を通る予定だったこれらのバスは、一時的にアルマ橋を経由するルートに迂回されています。
今夏はバカンス中ということもありますが、オリンピック期間中、運賃が2倍に上がったことで、メトロ線の乗客は普段の半分以下にまで落ちました。私が知っている限りでは、満員電車になることはありませんでした。
高値になった乗車券と主要会場へのバスの移動が困難になったことも影響し、利用者減に繋がりました。
歩道や道路では柵が敷かれ、どこの道路を歩いても視界に武装した警備員が異常なほど目に入りました。気温が30度近い中、敢えて徒歩で移動するよりも、自宅でテレビ観戦している方を選ぶ人も多かったと思います。
参考リンク
雨の中のQRコード
開会式当日。
日が沈み、夜になると雨は音を出して降り出しました。
聖火がトロカデロ広場に着き、セレモニーが始まった頃、エッフェル塔方面へ外出することにしました。
エッフェル塔は赤く染まり、赤い光線が激しく夜空を照らし、そのあと青いエッフェル塔に変わり、同じく青と緑の光線を夜空に激しく照らしていました。まるでエッフェル塔がナイトクラブのお店のミラーボールの様でした。
建物の屋上からは、住民たちがエッフェル塔の壮麗な照明ショーに夢中になり、歓声が聴こえ、仲間たちと楽しく乾杯していました。
そんな中、雨がかなり降っているにもかかわらず、警備員たちは誰も傘を差さず、雨の中をずっと堅実に任務を遂行していたのが印象的でした。
この時点でもQRコードが印刷されたコピーを持ちセキュリティチェックを受けました。隣の地域への移動も試みましたが、隣の地域の住民ではないので、QRコードを持っていても通過することは出来ませんでした。
雨の中のQRコードの読み取りは、機器が濡れて何度もスキャンしたり、コピー用紙が濡れてシワになり、とても困難でした。
QRコードの問題点
QRコードを持っていても、隣の区域へのアクセスは制限されていて、自分の住む限られた区域に限定されていました。
特に夏の日中はスマートフォンの画面が太陽光で反射してしまい、QRコードが読み取りにくくなるという問題が頻発しました。
この問題に対処するため、多くの参加者はQRコードを紙に印刷し、その印刷物を警備員に提示していました。この方法により、スマートフォンの画面を使用するよりも、より迅速かつ確実にスキャンを行うことができました。
しかし、雨天時には印刷した紙が濡れ、その結果、QRコードの読み取りがさらに困難になりました。
QRコードは、天候に左右されやすい照合システムと言えます。信頼性が天候条件によって大きく影響を受けるということがわかりました。
QRコードの影響
パリオリンピック2024の幕が閉じた今、改めて振り返ってみると、QRコードの導入により、迅速かつ正確な人物照合が可能となり、パリの住民と訪問者はより安全に、警備の中で安心して過ごすことが出来ました。
QRコードの使用には天候による、いくつかの課題がありましたが、全体的に見れば、セキュリティの向上と混雑の軽減に大きく貢献し、これらの技術的進歩がパリオリンピックを安全で、人の流れを管理する必須手段となりました。
大会期間中の宗教施設への警備は特に厳重でした。何事も無く終わったことは、全体を通して大きな成功だったと言えるでしょう。
QRコードのまとめ:
技術の導入: QRコード技術の導入は、大会の流れがスムーズになり警備に貢献した。
セキュリティ向上: QRコードの導入により、セキュリティ検査が迅速に進み、イベントがより安全になった。
技術への課題:日中の強い日差しや雨天時にQRコードの読み取りに課題が見つかる。
柔軟な対応:多くの訪問者が紙に印刷されたQRコードを使用し、柔軟に対応した。
参考リンク
- パリオリンピック開催期間中のパリ市の現地イベントはこちらからご覧ください。
- オリンピックのセーヌ川の現地ならではの記事はこちらからご覧ください。
最新の記事はこちらです。【パリ暮らしあれこれ邁進】